鰻にまつわる悲喜劇…島原の仇を丸池でとる!?
「他人(ひと)の自慢や旅行の土産話ほどつまらないものはない」―。美術教師というより〃飲み仲間〃としての付き合いが深い、松崎善幸さんの〃名言〃だ。
してみると、これから書こうとしているのは、松崎先生からすれば「つまらん!」の一言で片付けられてしまうだろうが、少なくとも〃自慢話〃ではない。強いて言うなら〃こぼれ話〃だ。
丸池湧水での昼食時のこと。この日のメニューはご当地名物の鰻料理。何の変哲もない民家の座敷に通され、供されたのは、やや小ぶりの鰻丼。確かに、鰻そのものは美味かったのだが、いかんせん〃3切れ〃しか載ってない。それに、ご婦人向きかも知れないが、飯の量がいかにも少ない。
そんな筆者の思いを代弁してくれたのが、世話係の林田観光バス社長、林田正剛さん。「スンマセン。ご飯のお代わりば良かですか?お金は払いますけん」。で、止せばいいのに筆者に向かって「マモッちゃん、あんたも要るやろ?」と振ってきた。が、生憎(あいにく)、もう最後の1切れを呑み込んでしまった後だった。
仕方がないので一足先に表に出たのだが、玄関口に「常陸宮殿下もお立ち寄りなった」との記念のアルバム類。だとすれば、「もっと深く味わうべきだった…」と再び臍(ほぞ)をかんだが、もう後の祭り。
待ち時間のついでに、通常のお客さんが入っている隣の食堂コーナーを覗いてみると―。何やら、焼鳥のような串刺しや、オニギリの2個パックなどが並べてある。思い切って店内に入って訊いてみた。
すると、串刺しは滋養満点で知られる〃鰻肝〃ではないか!それにオニギリは鰻の炊き込み飯だ。迷わず1個ずつ買い求めた。
さあ、ここから先が〃知恵足らず〃で鳴る、筆者の真骨頂。「どう、よかろが。鰻肝ばい。1本150円。安かろ!」。鰻肝は一人で平らげたが、残りのオニギリ1個はゴルフ仲間のアポロ興産会長、馬渡迪裕さんに差し上げた。
すると、どうだろう?筆者の後から続々と鰻肝を求める人の列が続いた。「オイはこん店のサクラんごたっとん…」などと、自身の存在価値に疑いの目を向けつつ、つい2週間ほど前の我が家でのある〃出来事〃を思い出していた。
何かのお返しで、諫早の鰻料理の老舗から送って頂いた蒲焼とタレの包み。ズシリとした感触があったので、相当な量が入っていたはずだ。
ただ、こういう時に限って筆者には〃飲み会〃の約束が入っており、母や家人は「そりゃ残念…」と心にもないことを言う。それでも必死の抵抗を試みて、翌日の朝食時に〃残り物〃を見付けて、思いっ切りタレを掛けようとしたら―。
「ダメ!ダメ!そいでまた鰻ば炊くとやけん」。ただ、その〃二番鰻〃も筆者の口には入らずじまい。結局、島原の仇を丸池で!?
-つづく-
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