虹鱒は海水でも育つ…その名はトラウトサーモン
〈えっ、今まで『サーモン』(鮭)とばかり思い込んでいたのに、その実は『ニジマス』(虹鱒)だった、ってか!?〉前号の最終章はこんな感じで結んだわけだが、ドリトル先生の記事を読むまでは、本当に疑う気持ちは露ほどもなかった。
ここで言う「ドリトル先生」とは、テレビ等でもよく見かける生物学者の福岡伸一さんのこと。その先生が朝日新聞社から出ているアエラ誌(5月14日号)に寄稿されているのだ。
「海の魚はあんなにしょっぱい海水に囲まれていますが、水を飲まないのでしょうか。」という質問に答える形で、まさに「目からウロコ」の論旨を展開して下さっている。以下、要点を拾う―。
《海水の塩分は3%。これに対して生物の体液や血液は0.9%。これが生理的食塩水。もし(人間などの生物が)海水を飲み続けていると、浸透圧の原理で体内の水分が細胞外へ出ていってしまい、やがて死に至る。ナメクジ退治に塩を用いるのはこの原理》
《海に棲む魚も当然真水を飲まなくては生きてはいけない。そのために、ある機能(塩類細胞・イオンチャネル)がエラの部分に装備されていて、海水中の塩分を体外へくみ出している》
《サケやウナギなど川と海を往復する〃両刀使い〃の魚は、その機能に柔軟性がある、ということ。ニジマスも本来は淡水魚だが、同じようなわけで海水でも育てることができる》
《最初に淡水で育てたニジマスを海水に移すと、4、5年で倍以上(約1メートル)になる。これは塩類細胞をフル稼働させることによって、全身の成長ホルモンの分泌が高まるため》
《現在、この原理を応用したニジマスの海面養殖が一大産業になっており、こうして誕生したニジマスは『トラウトサーモン』という名前で流通している。つまり、これが回転寿司などで出回っている『サーモン』のこと》
読者の皆さんの中には、「そんな事なんかとっくに知ってるよ!」と鼻白む方もおられるだろうが、筆者のように少なからぬショックを受けた方も、おいでではなかろうか…?
筆者がまだ若かった頃は、サケの刺身は「ルイベ」と呼ばれる〃半冷凍状態〃でしか食べることができなかった。なのに、近頃はどうして?という疑問は常々抱いていたが、これでやっと〃氷解〃した。
それにしても、回転寿司巡りを続けていて如実感じるのは「サケネタ」の多さ。今日まで勝手に騙されてきたことを思うと、やや複雑な思いがしないでもないが、あの脂身のトロッとした味わいはやはり捨て難いのである。
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