2012/08/12

知らなかったこと2題…名前の消えた〝身分証明書〟

ある事務手続きをするのに身分証明書の写しを求められた。迷わず運転免許証をコピーして差し出したのだが、怪訝(けげん)な表情を浮かべる相手方。

一体どうしたことか?と尋ねてみると、「名前の部分が擦り切れています…」とすまなそうに教えてくれた。 ならば!と次に取り出したのが健康保険証だったが、こちら方もほとんど同じような状態。

とうとう困り果てて期限切れ間近のパスポートを見つけ出して事無きを得たのだが、そこに貼られた写真(10年前)をみると、まるで〝別人〟のような自分がいた。歳月とはつくづく残酷なものだ。

海外旅行には当面行く予定などないからパスポートはともかくとしても、ふだん使いの運転免許証、健康保険証に関しては、至急〝再発行〟の手続きが必要だろう。

ただ、一つだけ気懸かりなのは運転免許証の方だ。この前知人から聞いた話だと、「末尾の番号」がまたまた増えてしまう。

実は筆者も初めて知らされたのだが、末尾の数字は「再発行」の回数を示しているのだそうだ。ちなみに筆者の場合は、今回申請すると「2」が「3」となってしまう。

念のため、拙稿を書いている途中で事務所に残っている弊社の社員5人に確認してみると、はたせるかな全員が「0」であった。

別段、「失くす」という行為自体は「罪」には該当しないだろうが、自分自身の杜撰(ずさん)な生き様がそこに〝刻印〟されているようで、俗に言う「忸怩(じくじ)たる思い」なのである。

まあ、この件に限らず、世の中は本当に知らないことばかりという、他の事例を一つ。と言っても、すでにご存知の方もいらっしゃるだろうが…。

先般、とある方に「御礼」の品を贈ろうと思って、某有名デパートの地下食品売り場を訪ねた。今一番人気のある商品とかで、30人ほどが並んでいた。

待つこと十数分。やっと自分の番が来たので、あらかじめ決めていた商品名を伝えると、まだ幼さの残る売り子のお嬢さんが「熨斗(のし)はどうされますか?」と尋ねてきた。

「そうですね、寸志でお願いします」と答えると、意外にも次なる返事。「お客様、お相手の方は年下ですか?寸志は目上の方が目下の方に向かって使われるものですよ」。

そんな礼儀の法則などつゆ知らぬ筆者は、一瞬恥しくなって「それなら、薄謝にしましょうか」と、ごく自然な流れで返した。と今度は、お嬢さんが困り顔になった。

「えっ、ハクシャ。それはどう書くのですか?」ときた。つまり、このお姉さんは「御礼」の意味の「薄謝」をご存知なかったらしい。

しかし、それより何より、「寸志」の正しい使い方を教えてもらって、何だか得した気分になった。