ノーサイドで行こう!!…前市長の手腕を評価した上で
今年の師走は日本列島全体が「衆議院選挙」一色に塗りつぶされた感があるが、ともにイギリスを発祥の地とするサッカーやラグビーのスポーツ界もいよいよこれから正月明けへ向けて〝佳境〟を迎える。
そのラグビーの世界でよく語られる言葉が2つある。すでに人口に膾炙(かいしゃ)している話なので今さら述べるまでもなかろうが、1つは「ワン・フォー・オール。オール・フォー・ワン」という、かの有名な言い回しだ。
直訳するなら、「一人はみんなのために。みんなは一人のために」―。つまるところは、団体競技(≒社会)におけるチームワークの大切さを謳っている箴言(しんげん)だ。
さて、もう1つは?こちらも有名なのでご存知の向きも多いだろう。そう、「ノーサイド」という短いフレーズだ。
換言するなら、試合が終わったら、勝敗の結果は別として、互いの健闘ぶりを称え合おうというスポーツマンシップに則った、いわゆる「騎士道」の精神に基づく考え方である。
先般、元国見町長で合併後初の雲仙市長選に挑んで敗れた渡辺秀孝さんとお会いする機会を得た。そこで、以前から〝小耳〟に挟んでいたある出来事について尋ねてみた。以下はそのやりとりの一部。
「先生(筆者はそう呼ぶ)は、市長選挙で負けた後に、当選者に祝福の電話を入れられたそうですね。その話は本当ですか?」。
「あー、したよ。立候補者は誰でも、その地域を発展させたいと願っていることに違いはなかろう。『私の分もしっかり頑張って!』と激励した」。
話は相前後するが、渡辺さんは本県ラグビー界の重鎮の一人である。筆者は直接ご本人から事の真偽が確認出来て、とても清々しい気分になれた。「これぞ、『ノーサイド』のラグビー魂なのだ」と。
さて、島原市長選挙の結果が出た。市を二分した激しい一騎打ちの戦いだったが、結果は新人の古川隆三郎さんが見事!初当選を果たした。
休刊日から一夜明けた各紙の紙面では、新市長の当選の喜び、選挙戦を振り返っての話、抱負などが分析記事として紹介されている。いずれも傾聴に値する内容だ。
ただ、新市長も各社のインタビューに応じられている通り、むしろ問題はこれからの「市政の舵取り」の難しさである。
戦いである以上、「勝者」もいれば、「敗者」もいる。また、ある程度、心情的なシコリも残るだろう。
しかし、それは1日も早く取り払わなければならない。それが新たな島原市を醸成していく上での「ノーサイド」の精神だ、と思う。
最後に、誤解を恐れずに言うなら、筆者は前市長の行政手腕を今でも高く評価している。もちろん新市長には、手法は違えども、さらにその上をいってほしい、と期待している。
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