矢野さん大いに語る③…日本は「お互い様」の文化
さっき父の話をしましたので、これから母の話を少しだけ―。今朝は早起きして家(大分市)からやって来ました。母はそれより前に起きていて、こう言いました。「えれ~早いのう。どこに行くんか?」。
そこまでは、まだいいんです。いつもの口癖がまた始まりました。「ハンカチは、チリ紙は、免許証は持っちょるか?」。
「50も半ばを越えた男にチリ紙は無かろうもん、母ちゃん」と反発しましたが、本音のところでは感謝しているのです。
男と女の最大の違いは、前者が「言わんでも分かるやろ」に対し、後者は「言わんと分からん」と構えるところです。
さ~て、会場の殿方に注意を喚起しますが、奥様が美容院に行かれて帰って来られたら、絶対にその「髪型」を褒めないとダメですよ。でないと、女性は必ず怒り出します。つまり「声掛けの大事さ」です。
ところが先だって、鹿児島の口演で軽いカルチャーショックを受けました。演題は「男女共同参画型社会について」だったのですが、大方、好意的に受け止めて頂いたものとばかり思っていたら、何やらブツクサ言っておられるご仁がいらっしゃいました。
後で理由を尋ねたら、鹿児島弁でよく聞き取れませんでしたが、「相手の目を見れば分かるじゃないか」との御説のようでした。
私も「なるほど!」と思ったものですから、さっそく自宅に帰って実践してみました。夕食のテーブルで嫁さんに向かって言葉を発せずに、目でもって〈醤油をくれ〉とシグナルを送ったのです。
一度ならず二度、三度…と試みたのですが、一向に通じません。嫁は首を傾げながら「はぁ~、えっ、ナニ?」。やっとのことで気付いてもらったと思ったら、「自分で取れ!」と一喝されて、万事休す。
夫婦間の会話の難しさを改めて痛感した次第ですが、地域(ご近所)での会話は決しておろそかにしてはなりません。
日本(文化)の良さは「お互い様」なんです。だから、何でもかんでも弁護士に頼んで訴訟に持ち込むというような(米国流の)考え方はなじみません。
皆さん、ふだんから積極的に「声掛け」をしましょう。その一言で、独り暮らしのお年寄りなどは、どんなに勇気づけられることでしょうか!
時にうっとうしい母親ですが、「母ちゃんがおらんかったら困る」と言って、必要とされていることを伝えれば、母親も喜びますし、元気も出てきます。
こうしたことを普段から心掛けて実践していけば、きっと家庭も世の中も平穏に進んでいくはずです。
もちろん、誰にだって「悩み」はあるでしょう。ただ、偉そうなことを言うようですが、「悩みがあるということを知ること」が「悟り」に繋がっていくものだと思います。 -つづく-
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