2013/06/20

見直される地域ラジオ…大震災で判った4つの限界

次にマイクを執った村上圭子さんは「NHK放送文化研究所メディア研究部専任研究員」という肩書きが示すように、放送のプロ中のプロである。これまでに手がけてきたテレビ番組は『NHKスペシャル』『クローズアップ現代』など。テーマはどれも大規模震災だ。

また、ラジオを通じた番組では、中越・中越沖地震や平成21年台風水害(佐用町)などを取材し、『地域社会とメディアの実験~15年目を迎えたコミュニティFM~』を制作したことでも知られる。

この日(12日)は「臨時災害放送局の役割と課題」(ポスト東日本大震災の災害情報伝達)と題して、現行制度上の様々な問題点を多方面からあぶり出し、放送・通信業界や国県市などの行政が進むべき道筋・・について持論を展開した。

本論に入る前に少し整理をしておくと、同じ「地域ラジオ」でも、自治体が免許主体となる「臨時災害放送局」と、FMしまばらのように総務省が管轄する「コミュニティFM局」(CFM)の二種類がある。

最近では「東日本大震災」を機に、国の方でも「放送ネットワークの強靭化に関する検討会」が開かれるなど、CFMの存在がにわかに見直されてきており、防災行政無線を補完・・する放送局として明確に位置付けられている。

以上のことを踏まえながら、村上さんは地域ラジオの特性を「5つのA(英語のエニー○○)」で表した。すなわち、「いつでも」「どこでも」「どれでも」「なんでも」「だれとでも」生きた情報の伝達が可能なメディアというわけだ。

根拠となっているのは、今回の大震災で「4つの限界」が明らかになったこと。具体的には①通信・インターネットの限界②自宅据え置き型の限界③防災行政無線(同報系)の限界④マスメディアの限界―。

一方で、地域ラジオの「優位性」については①放送波で耐災害性が高い②端末を持ち運べる(天候に左右されない)③操作が簡単で高齢者との親和性がある④多様な情報を継続して伝達することが可能⑤一斉同報・プッシュ型などの緊急情報に適している⑥市町村が伝えたい内容を伝達しやすい⑦きめ細かな地域情報の収集と発信が可能―などとしている。

村上さんによれば、東日本大震災では27か所で臨災局が立ち上がり、うち15局はCFMに経営形態を変えて地域住民や行政機関と協力しながら「災害復興」を目指して日々放送を続けている、という。

最後に「求められる市町村の主体性」について。村上さんは4つの重要ポイントを挙げた。①一斉同報の有効活用②モバイル端末基軸③手段の多様・多重化④地域・個人向け情報。

期せずして、島原での我々の取り組み事例をお話いただいているような気分になり、勇んで名刺を交換してきた。 -つづく-