2013/06/21

拠点だけでは救えない…NHKアナが語る〝教訓〟

講演終了後の質疑の中で、やにわに手を挙げたNHK宮崎放送局の男性アナウンサー。驚くことに、「3・11」の当日は同仙台放送局のスタジオにいて、臨時ニュースの原稿を読み上げていた、という。よもやこの時点で、この人と後に話すようになろうとは夢にも思わなかった。だが、まさに「事実は小説より奇なり」であった。

全国200社強のCFMが加盟する「日本コミュニティ放送協会」の定時総会(14日)は、型通りに審議が進み、我々九州地区の協議会が推薦した久留米・ドリームスFMの白石勝洋社長(元久留米市長)が全会一致で新会長に選ばれた。

記念講演会の講師は陸自・東北方面総監部幕僚副長の堀切光彦さん。限られた時間の中で、約10万人にも及ぶ仲間とともに寝食を忘れて取り組んだ、災害派遣当時の〝苦労話〟を淡々と語ってくれた。

引き続き行われた懇親会には、上司の田中敏明東北方面総監も参加されていたので、ご挨拶に伺った。話はもちろん、普賢岳災害当時「雲仙のシュワルツコフ」として崇められた山口義廣さん(元東北方面総監)のことだ。

総務省からは、CATV業界では〝超有名人〟の吉崎正弘情報流通行政局長をはじめ、長崎県勤務の経験もある石山英顕地域放送推進局長(元宮城県総務部長)ら幹部職が多く出席されていた。

代表して祝辞に立った吉崎局長は「安倍政権の中で国土強靭化の論議が進んでいるが、中でもCFMに対する期待が高まっている」(中央防災会議)として、関係各位のより一層の奮起を促した。

一方で、この日は現地出版社の社長、土方正志さんと会う約束をしていたので、中座して待ち合わせ場所へ。長らくのご無沙汰であったが、居酒屋での乾杯とともに時間の溝はすぐに埋まった。

話題はもっぱら普賢岳災害当時の思い出話。ただし、そこだけに止まらないところが、さすがにプロの編集者である。こう切り出してきた。

「自分は雲仙、奥尻、阪神、有珠山等々の取材を経て10年ほど前に仙台に居を構えて、『東北学』という見地から出版事業に取り組んできたが、先の震災で自宅は壊滅してしまった…」と。その過程で飛び出てきたのが、冒頭のNHKアナの話だ。

「僕もよく番組に呼ばれて、喋らせていただいたんですよ。その方は宮崎県出身の杉尾宗紀(すぎお・そうき)さんですよ。電話してみますか?」。

もちろん二つ返事だ。杉尾さんの防災持論は、「拠点は崩壊する。拠点だけでは人は救えない」というもの。電話を切った後、さすがに考えさせられた。そして得た結論は「仏に魂を入れること」。とても大きな宿題をいただいた気がする。
-おわり-