時は流れて時と知る…イチローの“快挙”の陰で…
諸事全般、余りにも色んなことがあり過ぎて、何から先に手をつけたらよいものやら。加えて、このクソ暑さ。ことしの夏は、まったくもって「加減」というものを知らない。
そんな滅入った気分でいるところに、昨日から今日にかけて大きなニュースが続々と飛び込んで来ている。ふだんなら「ネタあり!」と勇んで飛び付くところだが、余りに多過ぎても却って迷ってしまう。
が、何はさて置いても今日の場合は大リーグ・ヤンキースの「イチロー選手」のことだろう。日米を通じての4千本安打達成!!もちろん、日本人選手初の「金字塔」であるわけだが、大記録達成後のインタビューでの受け答えがこれまた唸らせる。
筆者はたまたま、宮崎金助先生(島原文化連盟委員長)がこのほど上梓された『精神文化としての武士道』を読んでいて、ハタと思い当たった!つまり、イチロー選手の立ち居振る舞いは、現代における「武士道」に他ならないのではないか、と。
宮崎先生の著書から引く―。剣豪・宮本武蔵の兵法書『五輪書』(水之巻)にこういうくだりがあるそうだ。「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす」と。
一方、イチロー選手は「4千本の安打を打つために、8千回の悔しい思いがあった…」などと、インタビューで語っているが、まさに武蔵流の「鍛」と「錬」との世界を地でゆく修行ぶりではないか。
今やイチロー選手が醸し出す雰囲気は、単なるアスリートの域を超えているような気がしてならない。そう彼は、太平洋を渡った「野球の求道者」にして「現代のサムライ」なのである。
さてさて、お次は夏の甲子園大会。初出場の前橋育英(群馬県代表)が初優勝を果たした。残念ながら、延岡学園(宮崎県代表)は1点差で敗れたが、不思議と誰の胸にも「敗北感」は無いのではなかろうか!?
甲子園の球児たちを見ていていつも思い出すのは、高校野球を愛してやまなかった作詞家の故・阿久悠さんの次の言葉だ―。「夢は砕けて夢と知り 愛は破れて愛と知り 時は流れて時と知り 友は別れて友と知る」(人間万葉歌)。
筆者などは〝大〟の付く阿久悠ファンなので、時おりこのフレーズを思い起こしたりしているが、それにつけても残念なのは、藤圭子さん(62)の自殺のことだ。
五木寛之さんが「演歌」でなく「艶歌」でもない「怨歌」と称した、独特な節回しとやや寂しげな表情と視線。ちょっとだけお姉さんだったが、ほぼ同世代の大歌手だった。
「十五、十六、十七と 私の人生暗かった 過去はどんなに暗くとも 夢は夜ひらく♪」。ニュースを知って、改めて〝人の世の儚さ〟を噛みしめた人も多かったに違いない。合掌。
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