やられたら“倍返し”…『半沢直樹』は社会現象
直木賞作家、池井戸潤(いけいど・じゅん)が編み出した小説の主人公、半沢直樹(はんざわ・なおき)が大人気である。もう〝社会現象〟と言っていいのかも知れない。
筆者はたまたま本屋で見つけた『ロスジェネの逆襲』(ダイヤモンド社)を読んで、その面白さにハマったわけだが、テレビドラマ(TBS日曜劇場『半沢直樹』)のブレークぶりは遥か先を行っているようだ。
少し整理をしておくと、半沢は都銀の合併によって生まれた「東京中央銀行」というメガバンクに勤める一行員。出身校は慶応(池井戸自身も一時期三菱銀行勤務)で、行内外で起きる様々な難問・奇問に捨て身でぶつかって見事に解決していく、勧善懲悪型の痛快劇だ。
決めゼリフは「倍返しだ!」。主役は演技力抜群の堺雅人。〝目力〟の凄みを強調した演出には鬼気迫るものがあるが、一方で、嫁役の上戸彩がホンワカした何とも言えず〝いい味〟を出している。
見逃してならないのは脇役陣の充実ぶり。頭取役・北大路欣也の重厚ぶりは言うに及ばず、嫌味な上司役の香川照之、オカマで国税・金融庁担当官の立場から半沢を目の敵にしてイジメようとかかっている歌舞伎俳優の片岡愛之助など、いずれ劣らぬ芸達者揃い。
ドラマはこの先どのように展開していくか分からないが、実際の銀行マンの間でも、大いに〝話題〟になっているそうだ。
その視聴率は人気の『あまちゃん』(NHK)を軽くしのぎ、ここ2週連続で29%(平均)を獲得。ちなみに、瞬間では33%強。この調子だと、一昨年の『家政婦のミタ』(日本テレビ)の記録(40%)を超えるかも知れない、とか=25日付毎日新聞。
同じく人気のTBS系『サンデーモーニング』でも、昨日は「風をよむ」という定番コーナーの中で『半沢直樹』を取り上げていたし、今朝の『天声人語』(朝日新聞)にも出ている。これを〝社会現象〟と呼ばずして、何と呼ぼう。
識者の多くはこの現象を「閉塞社会の裏返し」などと分析しているようだが、実際のところは、作り手にとっても思惑以上の反応ではなかろうか…。
作者は常々作品の中でも「銀行は晴れた日に傘を差し出し、雨の日に傘を取り上げるもの」と言っているそうだから、ひょっとしたら我々庶民(借りる側)の味方なのか!?
まあ、その真意のほどはさて置くとして、昨夜のセリフもよかった。「銀行のために取引先があるのではない。取引先のために銀行はあるのだ」。半沢は確か、そんな風な事を言っていた。まさに〝人気の秘訣〟はここいら辺か?
最後に余談だが、このドラマの演出を担当しているのは、慶應義塾の創設者にして現一万円札の肖像画、福澤諭吉の玄孫(やしゃご=曾孫の子)ということだ。[文中敬称略]
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