向田さん逝きて33年…『半沢』効果でTBS浮上
民間放送(第1号は日本テレビ)が始まって60年。その世界ではいまだに「視聴率」が番組の最終的な価値基準であることに変わりはない。何となれば、その数字こそが経営の屋台骨となるスポンサー料に直結しているからだ。
通常、1%の視聴数は100万人と言われており、いま人気の『半沢直樹』(TBS系)の今月1日放送分のそれは30%だったから、3000万もの人々がテレビの前に群がって「倍返しだ!」のセリフを楽しんでいたことになる。
当然のことだが、テレビの関係者はキー局・地方局に係わらず、一様にその動きに〝一喜一憂〟しているのが実態だ。
仕事柄、県内外の民放局を訪ねる機会もあるが、調子の良い局は、受付のコーナーからエレベーターの中に至るまでペタペタとその数値を貼り出している。
率直なところ、違和感を覚えないでもない。しかしながら、選挙戦における〝得票数〟のようなもの、と思えば合点もいく。
さて、その過激な競争の中で、今年の8月放送分に関しては、TBSがフジテレビを抜いて3位に浮上した、とスポニチアネックスが報じている(5日付)。
1位は日本テレビで、2位はこのところ絶好調のテレビ朝日。ゴールデン帯(午後7時~10時)では、2位と3位との差は僅かに0・3ポイントだった、とか。
TBSの視聴率を押し上げた立役者はもちろん『半沢直樹』に他ならない。しかし、これとていつまでも続くという保証はどこにもない。
30年ほど前までは、在京キー局の中で最下位の指定席は東京12チャンネル(テレビ東京)と決まっていた。今と違ってNET(テレビ朝日の前身)は「振り向けば12チャンネル…」などと揶揄されていた。
当時の雄はTBS(東京放送)で、「報道のTBS」「ドラマのTBS」などと社員諸氏の鼻息も随分と荒かった。
その後、漫才ブームを巻き起こしたフジテレビが「面白くなければテレビではない」とのキャッチフレーズのもと大躍進。日本テレビと熾烈なトップ争いをつい数年前まで続けていたことは記憶に新しい。
ところで話は変わるが、NHK総合で放送された『クローズアップ現代』(4日夜)では、脚本家で多くの人気テレビドラマを書き下ろした、向田邦子さんの没後33年を特集していた。
インタビューの中で向田さんと親しかった黒柳徹子さんがとある〝裏話〟を披露していた。それによると、向田さんの口癖は「人生すべてあざなえる縄のごとし」だった、という。
今となっては確かめようもないが、向田さんもやはり「視聴率」を気にしていたのだろうか?いやいや、そんな「俗物」なら、もうとっくの昔に忘れ去られてしまっているはずだ。
…享年51歳。改めて早過ぎる死を悼む。
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