2013/12/01

本当に廃止でいいの?…「東京寮」もっと考えよう

長崎新聞の〝尻馬〟に乗るつもりなどさらさらないが、島原市の東京学生寮(武蔵野市、定員23人)が来年3月末をもって廃止することを年度途中で決めた島原市教育委員会の姿勢には、筆者自身も首をひねる。〝同感〟である。

既報の通り、その方針は去る14日の市議会教育厚生委員会で唐突に切り出され、委員諸氏からも多くの疑問の声が上がった、とか。

市教委の説明を集約すれば、「老朽化に伴う耐震上の観点から、入寮者の命を守ることを最優先にした」ということだろう。至極もっともな考えであり、その点で異論はない。

また、年間の維持管理費(約1千200万円)など財政的な事情もあろう。そこも納得する。ただ、「苦渋の決断だった」とする教育長の弁明は必ずしも額面通りには受け止められない。

筆者は元々教育畑ではないが、「教育は百年の計」でもって取り組むべきだ、と常々思っている。その伝でいくと、今の市教委の考え方には『米百俵』(長岡藩)に通じるような理念がない。「事なかれ主義」に映って仕方がないのだ。

一番頭にきたのは「関東方面への進学者が今後も確実に減少する」と決めつけたくだり。ここ数年来のデータを見た上での分析であろうが、大人の勝手な都合や状況判断で、子どもの将来の夢や希望に足枷をはめていいものか。

教育の基本は「機会均等」。本人が望み、精一杯努力しようとしているのだとすれば、その道の可能性を広げてあげるのが親(家族)や教育関係者に課せられた〝使命〟である。

視座を変えるなら、安い寮費(月額6千300円)だからこそ「苦学の道」だって選べる。今はどうか知らないが、吉祥寺の商店街にある「小ざさ」という超人気の和菓子店のアルバイトは歴代島原寮生の〝専売特許〟だったはずだ。

間もなく12月定例市議会が始まるので、その中で色んな論議も交わされるだろう。その前に少しだけ〝提案〟をしたい―。

①市民のみならず出身者も含めたところで、今後の資金面での対応も視野に入れて、もっと幅広で前向きなアイデアが出せないものか?筆者が知っている限りでも、島原市出身で東京を拠点に各界で活躍している方が沢山おられる。その中には寮のOBも多い。

②入寮対象者を島原半島三市に広げたらどうか?この際、既存の行政枠を乗り越えて、「オール島原半島」での取り組みとすれば案外面白いのかも…。ちなみに実現すれば、人口規模でほぼ匹敵する諫早市の「諫早修学館」(文京区、29室、東京事務所兼務)のような複合運営も可能なのでは。HPによると、月の家賃は1万3千円だそうだ。

最後に関東大震災(1923年)の後に現在の東京都の基盤を造り上げた後藤新平の言葉を引く。「財を遺すは下、業を遺すは中、人を遺すは上なり」