2014/01/01

新米社長の“独り言”…中小企業の経営者の苦労 (元旦特別篇)

   
代表取締役(いわゆる社長職)になって初めての正月を迎える。果たして何が変わったのだろうか?と自問自答してみるが、まだまだ〝実感〟に乏しい。

国民的映画『男はつらいよ』シリーズに出てくる「タコ社長」こと太宰久雄さんが、主役の「寅さん」(渥美清さん)に向かって吐く名文句がある。

「いいか寅、てめえなんかにな、中小企業の経営者の苦労がわかってたまるか」(第21作『寅次郎わが道をゆく』より)。

この記事を書くために調べていて初めて判ったことだが、長旅に出ていた寅さんがふら~っと帰ってくる「車屋」(おいちゃん夫婦が営む団子店)の裏手にある会社の名称は「朝日印刷」。そして、タコ社長の本名は「桂梅太郎」だそうだ。

筆者も印刷会社までは知っていたが、劇中の社名や社長の名前は今日までついぞ知らなかった。恐らく、読者の皆さんだってきっとそうだろう。

その過程でもう1つ判明したことは、実は島原出身の森崎東さん(最新作『ペコロスの母に会いに行く』)が1970年に同シリーズの監督をしていたこと。『寅さん』と言えば、山田洋次監督の〝専売特許〟とばかり思い込んでいたので、意外な発見である。

話の脱線ついでに、山田監督にまつわる話を一つ。山田さんの出生地は大阪府の豊中だそうだが、幼少期を中国・大連で過ごし、青春時代の一時期(15歳~18歳)を山口県宇部市でおくった、とある。

ただ、どういうわけか、山田さんの作品に宇部市を取り上げたものはまったく無い、と現地に住む知人から聞いたことがある。

宇部は映画の舞台になりにくい街なのだろうか?それとも何か別の理由があるのだろうか?

その宇部に関してさらに駄弁を弄すると、今を時めく「ユニクロ」(㈱ファーストリテイリング)の柳井正社長もそこの出身だ。

ただ、この方も社業の進展に合わせて、それまであったご自宅を早々に引き払われたそうで、それに伴う住民税の損失額(?)はナント年間3億円にも及ぶとか…。

いずれにしてもウラを取るような話でもないので放っておくが、柳井社長の年収の凄さに、ただただ恐れおののくばかりである。ねー、タコ社長!?

ところで、1年前の本欄で読者の皆様にお約束したことを、覚えておいでだろうか?その時は坂本龍馬の「船中八策」をもじって「寒中八策+アルファ」と題して10項目から成る努力目標を掲げた。

「その結果は?」と言うと、達成率はズバリ80%だった。よく首長選挙などで問われる、マニフェスト的な発想でいけば、「まあまあ」の評価はいただけるのではなかろうか。

ならば、今年は年頭に当たって何を「宣言」すればいいのだろう?かりそめにもこれからは最高責任者として最終的な経営責任が問われる立場だ。

テレンパレンとした曖昧な「口約束」に終わってしまうようだと、会社全体の信用問題にも波及しかねない。ここは一つ腹を括って取り組むしかない!

だだ、そうは言っても、不節制と運動不足からくる「肥満症」は一向に収まる気配はなく、腹周りは優に1メートルを超え、先日もやっとのことで超ビッグサイズのベルトを探し当てたばかり(※ユニクロ島原店で)。

と、ここまで書き進めてきて「相変わらず俺ってバカだなぁ~」と自嘲的な笑いが漏れ出てしまう。「腹」とはウエストサイズのことなんかでなく、「肝」(きも)のことだ。

そう、経営者にとって何よりも大切なことは、「何があっても企業を守り抜くという『肝』があるかどうか」ということである。言い換えるなら「信念」のことだ。

社長になってまだ一月余り。正直、何をどう舵取りして、社員諸氏やその家族を路頭に迷わせないようにしていったらいいのか、確たる答えは見い出せないままでいる。

ただ、モノは考えようだ。幸いにして我が社には、業務推進の知識や技術に長けた有能なスタッフが部門ごとに控えている。

言い換えるなら、社長である筆者の力量など余り問題とはならない。ポイントは、いかに皆が持つ能力を引き出して社業に反映させていくか、だ。

世界でも伝説的な経営者として知られる鉄鋼王ことアンドリュー・カーネギー(1835年~1919年)の墓碑銘にはこう刻まれているそうだ。「自分より賢き者を近づける術知りたる者、ここに眠る」と。

社長になって改めてこの言葉に触れた時、筆者のモヤモヤ感は一気に吹き飛んだ。「まるで私のために用意された文言ではないか!」と、一挙に百万の味方を得た気分になった。

しかしながら、問題はこれからだ。本当に個々人の才能を存分に引き出し、育てていけるのか?いかに会社全体の「調和」を図っていけばいいのか?

それには、何と言っても「健康」が必須条件だ。息子たちもまだまだ一人前ではないし、早々に「墓碑銘」を冠せられるのも嫌だ。

何はともあれ、新しい年は始まったばかり。ゆっくり立ち止まって、じっくり想を練ろう。時間は十分にある。そのうえで徐々に歩き始め、ある時機が来たら「目標」を定めて一心不乱に走り出そう。

ゴール?そんなものはない。所詮、世の中も人生も「終わりなき駅伝」ではないか。自分に与えられた区間を全力で走り切れば、それでいい!

結果は「二の次」。そうでしょう、タコ社長?島原半島の新しい名物は「走りダコ」とも言うようですし…。

おあとがよろしいようで、そろそろ筆を擱きます。皆様、どうぞ今年も宜しくお願い申し上げます。