2014/04/13

貴燈院の台詞を妄想…こっちに来たらいかんぜよ!

 「母逝きて 空きし一席 朝の膳」―。 恥ずかしながら、 俳句のたしなみが無いので「季語」そっちのけの語呂合わせであるが、 先般まで確かにそこに居た人物が消えた状況に、 改めて寂寥感がこみ上げる。

葬儀から早くも2週間が過ぎた。 その節は多くの方々にご参列いただき、 過分なるご香料に加え沢山のご弔電&ご供花を賜わった。 一番びっくりしているのは当の本人だろう。

亡くなったこと自体の悲しみはさて措くとしても、 通夜から葬儀にかけては親族一同相集い、 一種の 「お祭り騒ぎ」 のような賑やかさだったが、 その後は一人去り、 二人去りして… 「新たな日常生活」 が静かに始まろうとしている。

今さら申すまでもなく、 亡き母には度々本欄にもご登場いただき、 大いに 「巧まざるユーモア」 をふりまいてもらったが、 今となっては、 それはもう 「叶わぬ夢」 か…。

座敷に特別にあつらえた仏壇には、 筆者の手になる「遺影」(名機ライカで撮ったモノクロ写真)と 「お骨」を並べ、朝な夕なに線香を供え、 数珠を手に口をもごもごさせながら 「ナマンダブ、 ナマンダブ」(浄土宗)と念仏を唱える日々だ。

そして二七日 (ふたなのか) が過ぎ、 改めて 「卒塔婆」 を眺めているうちに、 戒名前の文字配列 (?) に変化が生じていることに気付いた。なるほど、 これが来世における 「中陰の旅」の道標なるものなのか。

母の戒名は「貴燈院」 で始まる。 その意味については荼毘(だび)に付されたあと、 菩提寺の本堂で営まれた法要の席でご住職からうかがったものの、 もうすっかり忘れてしまった。

ただ、 その言葉の響きから何とはなしに、 かつて夏目雅子さんが出演して大いに話題になった 『鬼龍院花子の生涯』 (宮尾登美子原作) を想い起し、 ひとりで可笑しくなって不謹慎にもホトケの前で笑いこけてしまった。

映画の中での花子の決めゼリフはご存じ 「なめたらいかんぜよ!」 (高知弁) だった。 もちろん、 任侠の世界に生まれた花子と、 教職にあった祖父のもとで生まれ育った母とでは、 何も相容れるものはあるまいが、 今後もきっと、 あの世から筆者に向けて数々の 「ご法度シグナル」 を送ってくることは容易に想像できる。

もっともそれは、 筆者自身の生き方の問題であり、 誰に悟られなくても嘘をつけばそのまま、「心の科(とが)」となって情け容赦なく責め苛むものである。

 「酒に飲まれたらいかんぜよ!」 なのか、 それとも 「仕事そっちのけでゴルフに行ったらいかんぜよ!」 なのか…。

いやいや、 母は見かけに似合わず剛毅な性格だったから、 そんなチマチマしたことは言うまい。 言うとすれば、 「まだまだこっちに来たらいかんぜよ!」 あたりだろう。 生きねば、 一所懸命に!!